2012年4月29日日曜日

京都下鴨病院:入院外来診療について-リハビリテーション科(肩関節疾患)


はじめに

京都下鴨病院でリハビリテーションを行っている主な肩関節疾患は、一般整形として、五十肩(肩関節周囲炎)・腱板損傷(腱板断裂含)・拘縮肩・石灰沈着性腱板炎など、スポーツ外傷として、反復性肩関節脱臼・投球障害肩などが挙げられます。

これらの肩関節疾患に対して、痛みや関節可動域、日常生活動作の改善ならびにスポーツ復帰のためにリハビリテーションを行っています。

一般整形:五十肩(肩関節周囲炎)·腱板損傷(断裂含)·拘縮肩·石灰沈着性腱板炎

(下線付きの文字をクリックしていただくと写真が表示されます)
  1. 安静時に痛みのある時期
  2. 患部の炎症による痛みのため、肩関節まわりの筋肉が異常に緊張し、さらに夜間の痛みが強くなることで肩関節の動きを妨げます。

    治療としては、医師が痛み止めなどの注射や投薬を行い、理学療法士が肩関節を冷やしたり(アイシング)、痛みが強くならないように注意しながら関節可動域訓練(関節の動かす範囲を拡げる訓練)や筋力訓練を行ったりします。その結果、肩がリラックスした状態となり、上腕骨頭が求心位(上腕骨頭が関節窩に正しく収まった状態)をとれることにより、痛みが軽減することを目指します。

  3. 動かした時、動かした後に痛みのでる時期
  4. 強い痛みがなくても、日常生活や仕事、スポーツなどを行った際に起こる痛みに対しては、姿勢の悪さが関係している場合もあるため(猫背、円背など)、良い姿勢が保てるようになるための運動や体操、生活指導等を行います。

  5. 痛みはないが、肩の動きが悪い時期
  6. 痛みが軽くなっても、関節の動きが悪い、腕が上がらない、日常生活で出来ない動作がある(髪をくくる、エプロンの紐を結ぶ、下着・ブラジャーの着け外し、ズボンの後ポケットに手を入れるなど)場合、関節の動きをよくするための運動療法(関節可動域訓練や筋力訓練)や物理療法(ホットパックなど)を行います。

  7. 手術後のリハビリテーション
  8. 医師が必要と判断すれば、手術を行いますが、手術後のリハビリテーションでも上記のリハビリテーションと同様の考えに基づいて行います。


    黄金のバランスの問題

スポーツ整形:反復性肩関節脱臼・投球障害肩

(下線付きの文字をクリックしていただくと写真が表示されます)

野球、ソフトボール、ハンドボールなどの投球スポーツ、バレーボール、バドミントン、テニスなどのオーバーヘッドスポーツ、アメリカンフットボール、ラグビー、サッカー、柔道などのコンタクトスポーツを行っていると、少なからず、肩の痛みを生じたり、肩関節を怪我することがあると思います。一時的な痛みや軽い怪我であれば、しばらく安静にすることで問題なく競技に復帰できる場合もあります。しかしそこで無理をしてしまうと強い痛みが続くようになったり、傷めた部分がひどくなってしまう事があります。そうなると、スポーツ復帰どころか日常生活にも支障をきたすようになりかねません。そこまでいくと安静だけでは治まらず、治療が必要になってしまいます。

当院では肩関節の病変に対して保存療法もしくは手術療法にて治療を進めていきます。ただし、肩関節のみ治療しただけでは、たとえ痛みが消え一時的にスポーツ競技に復帰出来たとしても、そこに至った原因を探り出して治療しなければ、いずれ再発するものと考えています。

肩関節の治療と並行して、必要に応じて肩甲骨の動き・肋骨の動き・体幹の動き・下半身の動きを含めて全身的な動作としてスムーズに行えているかを同時に診ることにも努めています。そこから日常生活動作だけでなくスポーツ動作を行う中で、求心位(上腕骨頭が関節窩に正しく収まった状態)を保つことが出来るようにリハビリテーションを行っていきます。同時に求心位を保つにはどうすればいいかを患者と共に理解していく事で疾患の再発を予防します。

不安なく日常生活やスポーツに復帰することを目標として、競技復帰が速やかに行えるように、トレーナーと共に患部以外のコンディショニングや体力・筋力維持のトレーニングを行ったり、患部を含めた全身のコーディネーションを高める為のトレーニングを行いながら競技復帰を目指す場合もあります。

1.肩関節脱臼及び反復性肩関節脱臼の場合

初めての脱臼や、損傷部位が少ない場合、まずは保存療法にて治療を行います。

受傷後

三角巾とバストバンドにて肩関節を固定(3週間前後)
  初回脱臼の時、外旋位固定する場合もあります。

∗安静にして傷めた筋肉や靭帯の修復に努めますので、肩・腕は基本的に使わないようにします。

受傷後4週目


"高齢者"と "記憶喪失"

固定を外し、リハビリテーションを開始。
  セラピストによる肩関節可動域訓練(肩関節の動かす範囲を拡げる訓練)
  肩甲骨周囲筋や腱板の筋力強化訓練

∗求心位を保つことを意識しながら進めていきます。

∗肩関節以外の肩甲骨の動き、体幹や下半身の柔軟性や筋力をチェックし必要に応じて同時に治療、トレーニングしていきます。

受傷後12週目

各競技にあわせての関節可動域訓練や筋力強化訓練

∗徐々に日常生活や仕事、スポーツ競技での制限をなくしていく。

∗トレーナーと共に全身的にトレーニングを進めていき、復帰を目指します。

保存療法にて痛みや不安定感の改善がみられない場合や、これまでに脱臼を繰り返して反復性肩関節脱臼になっている場合は、手術療法の適応となります。

例として反復性肩関節前方脱臼に対して行われる鏡視下Bankart(バンカート)修復術があります。

鏡視下Bankart(バンカート)修復術後のリハビリテーション

術前

装具装着の仕方、衣服の着方、入浴方法などの指導をします。
  筋力測定(マイクロFET・状態に応じてCybex)

術後1日目

終日、下垂位外転装具で肩関節を固定(約3週間)
  肘以遠の運動は可能です。
  肩関節とその周囲のリラクゼーション(マッサージチェアにて)
  セラピストによる肩関節可動域訓練(肩関節の動かす範囲を拡げる訓練)
  アイシング

∗手術した方の肩・腕は基本的には使わないようにします。

∗肩関節以外の肩甲骨の動き、体幹や下半身の柔軟性や筋力をチェックし、必要に応じて同時に治療、トレーニングしていきます。

∗スポーツ復帰が目標の場合、体調に合わせて患部以外のトレーニングを進めていきます。

術後4週目

装具固定を外して、三角巾へ変更(約1〜2週間)
  肩関節可動域訓練(UBE、サンディング、振り子運動)

∗肘を机について支えた状態での書字(サイン程度)や食事、着替え、入浴の動作が可能となります。三角巾を外す許可が出れば、肘をつかなくてもよくなります。

術後6週目


オーストラリアの子供の肥満

自力での肩関節可動域訓練(仰向けでの肩体操)
  筋力訓練

∗自転車や車の運転が条件付で可能となります。(リスクが無いわけではないので条件については医師に確認してください。)両手で物を持つことも可能となります。

術後8週目

自力での肩関節可動域訓練(UBE、座った姿勢での肩体操)
  筋力訓練

∗手術した側の手で軽い物であれば持つことが出来るようになります。問題なければ、簡単な家事動作(例:洗い物・料理等)も可能です。

術後10週目

プーリー(滑車運動)

術後12週目

セラバンドを用いた筋力訓練

∗自転車・車の運転が可能な時期です。

∗スポーツ競技への復帰へ向け、本格的に競技に合わせたトレーニングに移っていきます。

∗上記は術後スケジュールの1例であり、脱臼方向や損傷部位により実際の治療内容は異なります。

鏡視下腱板修復術後のリハビリテーション

·術前

装具装着の仕方、衣服の着方、入浴方法などの指導をします
  筋力測定((Cybex)もしくはマイクロFET)

·術後1日目

装具にて肩関節を固定(約3週間)
  アイシング
  セラピストによる肩関節可動域訓練(愛護的に行います。)
  肩関節リラクゼーション

∗手術した方の肩・腕は基本的に使わないようにします。

·術後4週目/p>

固定を外し、三角巾を装着(約2週間)
  肩関節可動域訓練(UBE・サンディング・振り子運動)

∗肘を机について支えた状態での書字(サイン程度)や食事、着替え、入浴の動作が可能となります。三角巾を外す許可が出れば、肘をつかなくてもよくなります。

·術後6週目

自力での肩関節可動域訓練(仰向けでの肩体操)
  筋力訓練

∗自転車や車の運転が条件付で可能となります。(リスクが無いわけではないので条件については医師に確認してください。)両手で物を持つことも可能となります。

·術後8週目

自力での肩関節可動域訓練(UBE・座った姿勢での肩体操)


∗手術した側の手で軽い物であれば持つことが出来るようになります。問題なければ、簡単な家事動作(例:洗い物・料理等)も可能です。

·術後10週目

プーリー(滑車運動)

·術後12週目

セラバンドを使用しての筋力訓練

∗自転車、車の運転が可能です。

∗上記は手術後のスケジュールの1例であり、手術の方式やけがの状態によって個人によって異なる場合があります。

2.投球障害肩の場合

当院では、『投球動作は求心位(上腕骨頭が関節窩に正しく収まった状態)が保たれた状態で、なおかつ運動連鎖(下半身から骨盤・体幹・胸腰椎・肋骨・肩甲帯・上肢への順に運動が鎖のように繋がった状態)による全身運動である』と考えています。その考えから投球障害肩の原因を、肩関節も含め、肩甲骨・肋骨・体幹・下半身など全身の関節柔軟性・筋力等の運動機能の低下から運動連鎖が上手に機能していないためと捉えています。

そこで、痛みを生じている部位の治療はもちろん、必要に応じて、全身機能評価や運動連鎖評価を行っていきます。そこから投球フォームに潜む問題点を見つけ出し、その問題点を治療し改善することによって、肩関節に負担を掛けない投球動作を獲得することを目標としています。また、リハビリテーションを行っていく中で、患者自身にも自分の問題点を理解してもらい再発予防の為のセルフチェックが出来るようになることも目指して、日々治療を行っています。また、治療経過の中でトレーナーと共に患部以外のコンディショニングや体力・筋力維持のトレーニングを行い、患部を含めた全身のコーディネーションを高める為のトレーニングを行いながら再発しない投球動作の獲得を目指して治療を進めていき、競技復帰を目指� ��ます。

当院での投球障害肩に対するリハビリテーション・メニュー例

上記のメニューは1例であり、内容は症状や状態によって異なります。



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